日高川町が5月末に船津地内に開所した有害鳥獣食肉処理加工施設「ジビエ工房 紀州」に、県内外からの視察が殺到している。狩猟グループらが捕獲したイノシシやシカの肉を食用として利用するために解体処理、加工する施設で、農作物被害が深刻な鳥獣害対策への切り札的事業。行政主導のこのような施設は全国的に珍しく、鳥獣害対策に頭を悩ませる他の中山間地域から期待と注目を集めている。
農家の生活基盤を揺るがし、 労働意欲までも奪ってしまう農作物への鳥獣被害は、 全国の多くの地域で深刻な問題となっている。 各自治体ともさまざまな対策を講じているものの、 期待しているほどの効果は得られておらず、 頭を悩ませている状況。 そんな現状の打開策を模索する上で、 わらにもすがる思いで日高川町まで足を運んでいる。
これまで視察には、 同様の施設開設を控える田辺市を皮切りに、 すさみ町議会、 那智勝浦町農業委員会が訪問。 22日には初めて県外から、 京都の宇治田原町議会総務産業常任委員会が訪れた。 同町は府内南に位置する中山間地域の町で、 宇治茶の産地として有名。 鳥獣による被害が深刻で、 特にシカについては茶葉の新芽を食べることから主幹産業を脅かす問題となっており、 シカネットや電柵を設けているが効果は上がっていないという。 この日委員らはジビエ料理を味わったあと、 施設を見学。 各種機器を取りそろえた各室を見て回り、 前処理室では獣肉の取り扱いに詳しい北岡悟さんがシカを使って獣肉の処理方法や衛生管理上の注意点など説明。 続いて町職員が施設開所に至るまでの経緯と取り組みを紹介した。 委員らは、 現状の打開につながればと説明を熱心に聞き入り、 食肉としての流通の問題や他の鳥獣害対策、 獣肉の取り扱い方などで質問した。 今西久美子委員長は 「被害が拡大しており、 何とかしたいという思いから訪れたが、 いい取り組み。 狩猟者数が少ないわが町では難しいかも知れないが、 可能であれば執行部へ提案してみたい」と話していた。今後も28日に有田川町議会、 29日に広島県安芸高田市議会、 来月には兵庫県三田市議会をはじめ、 福井県の嶺南広域行政組合などが訪れることになっており、 鳥獣害対策先進地として注目されている。
間もなく猪谷の施設も開所するが、 取り組みはスタートしたばかり。 獣肉は現在、 町内の産品所で販売しているが、 将来的には温泉宿泊施設で地元特産料理として利用客に提供するほか、 近年高級ジビエ料理として人気が高まっていることから町外のホテルでの需要も視野に入れている。 需要の促進と販売ルートの確立、 それに見合うだけの獣肉が確保できるかどうかが今後の課題で、 県内外から取り組みの成果に期待が集まっている。