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災害のない今に甘んじるな

2009年7月19日

 阪神淡路大震災が起こったのは、確か中学3年生のときだった。朝方の強い揺れ、「地震や、大きい」と思ったらすぐさま父が「大丈夫かっ?」と部屋に飛び込んできた。余震はそのあとも少し続き、いつまでも不安定な状態が続いていたのは覚えているが、災害の実体験がその程度であることは本当に幸せなことだと思う。

 56年前に日高地方を襲った「7・18水害」を同じく十代のころに経験した橋本克彦さんを取材した。これまで水害のことは資料を読んだり、写真を見たりして知っていたつもりだったが、実体験を生で聞くのは初めて。橋本さんは一つ一つの出来事や見たものを思い出すように、ぽつりぽつりと語り始めた。一瞬のうちに水の中に消えた御坊の町、激流の中を流される家やその屋根に必死でつかまっている人たち、うまくいかないヘリコプターでの救助、天田橋に避難した人々の不安な感情。ときどきつらそうに眉間を寄せ、無念さをかみしめているように思えた。「そのときは災害の訓練などというものがなかった。指導する者もなかった」と繰り返す。もし、訓練されていればもう少し救える命があったのではないかそんな無念が痛いほどに伝わってきた。
 
 自治会の会長も務める橋本さんは、自身の経験から防災への取り組みについて人一倍熱心だ。津波や火災などを想定してさまざまな訓練を行っている。その中で最近は子どもたちも連れて家族で参加してくれる人も多いのだとうれしそうに話していた。地域と未来輝く子どもたちを守るために訓練は最低限しておくべき、災害のない幸せな今に甘んじていてはいけない、そんな教訓を見にしみて感じた。改めて56年前の被災者へ冥福を祈りたい。     (と)

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